旧浪合村宮の原で戦死した後醍醐天皇の孫尹良親王の故事に因む。信州阿智村「御所桜」

御醍醐天皇の孫、尹良(ユキヨシ)親王が暮らした旧浪合村・浪合宿の語源は「並合」。それは家並が軒を重ねあって賑わっていたことに由来し、中馬海道を通る人馬が並び合ったからだともいわれています。

浪合が御所の里を標榜しているのには理由があります。南北朝動乱の時代、南朝勢力の挽回に奔走され、室町時代の応永31年(1424)8月15日、上野国から三河国に赴く途中、浪合の地で北朝方の敵軍に襲われこの浪合村宮の原で戦死した後醍醐天皇の孫尹良親王の故事にちなんでおり、この桜もそれゆえ「御所桜」といわれています。

どこからみてもほぼ同じ樹型をしておりなかなか見ごたえがあります。

 

遥か奥州に落ち延びる源義経の道中を思い起こす信州阿智「駒つなぎの桜」

阿智村南西部、岐阜県と県境を接する園原は、恵那山の東山裾に広がる山合いの小さな集落であるが、この地は古代・中世にかけて都人におおいに親しまれていた地なのである。その理由は、この地を大宝律令が出された701年に近江国(滋賀県)を起点に「東山道」という都から東国を結ぶ官道が通り、その東山道のなかでも殊に標高1576Mの神坂峠を超える信濃国阿知駅(阿智村)と美濃国坂本駅(中津川市)を結ぶ行程は、およそ七十四里を隔てる最大の難所といわれ、「神坂峠」の存在があまりにも大きかったのではないかと思われる。
都からの旅人にとっては険しい峠を越えた最初の人里、そして東国からの旅人にとっては東国最後の里、それが園原なのである。

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源義経が奥州下向の折りに、馬をつないで休んだといわれる大きな桜の木が旧道と林道との分岐点に近い水田の端にある。「駒つなぎの桜」といわれ、樹齢は800年を超えると言われるが、樹勢今なお盛んで、見事な樹冠をもたげ悠然と咲き薫る風姿は、牧歌的な田園風景をとびきりなものにしてくれる。難所・神坂峠の麓で多くの旅人の目を楽しませてきたことがうかがえる。棚田が重なる田園風景の中にあり、開花期は」ちょうど田植えの時期。田んぼに水が張られ、水鏡に映る薄紫の桜を愛でることができます。

長野から信濃町へ坂中街道の左右にある紅白の一本桜「大山桜」と「柳桜」

善光寺平北の小高い丘陵に位置する飯綱町牟礼は北信濃の山々を一望できるビュースポットがたくさんあるが、長野から信濃町へ通じる坂中街道沿いの、坂中トンネルを抜けて左手すぐの小高い丘の上に立つ、鮮やかな紅色をした桜が「地蔵久保の大山桜」です。樹高20m、幹周りは5m超える大きさで、その幹は地上わずか70cmのところで5本に分かれ、大きく横に広がる姿は新緑のなかひときわ鮮やかな紅色が遠目にもはっきり見えるが、樹齢100年を超える老木である。

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坂中トンネルを出た四つ辻を右に曲がり袖之山地区に向かう。小高くなった場所にあり、思う存分に長い枝を垂らして咲いているのが「袖之山のシダレザクラ」である。樹高は8.5mとさほど高くはないもののその枝ぶりは見事で長い枝では10m近くもあるだろうか。樹齢は320年以上といわれるが、その勢いは衰えず、滝に上がる飛沫のような堂々たる枝ぶりに煙るように豪勢に花を咲かせる。たくさんの枝を支える幹には、長い時間生きてきた木独特の存在感を感じるのである。日本画家・中島千波画伯が「袖之山枝垂桜」として描いたほか、絵や写真の題材として人気も高いらしい。通称「安養寺の柳桜」とも呼ばれ、もとは附近一帯は安養寺の境内であったという。青い空と残雪の残る北信五岳とのコントラストがうれしい。

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神代の昔からいくつもの時代を経てきた風格を漂わせる信州長野・素桜神社の「神代桜」

長野市内から七曲りを抜けて30分、飯綱高原に向かう途中にある芋井というほとんど戸隠に近いところの集落の田園風景の中に大きく枝を広げた美しい樹型のエドヒガンザクラがある。昭和10年(1935)に国の指定を受けた天然記念物で、高さ約20M、苔の生えた幹はいくつにも分かれ、枝は大地を覆うように四方八方に伸びるという大きさを誇る「素桜神社の神代桜」です。

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天照大神の弟である素戔鳴尊(スサノオノミコト)がこの地を訪れ、持っていた杖を地に挿したところ根付いて大きくなったと伝えられる推定樹齢1200年の巨木である。堂々と鎮座するたたずまいには、その名の通りいくつもの時代を越えてきた神様のよりしろにふさわしい堂々とした風格を感じる。

ペリーが来航した幕末の頃から谷を薄紅色の染める信州清内路「黒船桜」

国道256が走る清内路には嘉永6年(1853)ペリーが下田に来航した折に現在の場所に移植されたと伝えられることから名付けられたといわれる「黒船桜」がある。幹周3m、高さ10m、枝張り東西19m、南北14m、推定樹齢160年と村の天然記念物に指定されている。特徴的なのは横にぐんと伸びた立派な枝にたくさんの花を付け、下にたつとまるで花笠に入ったようになるほど、整った目を見張る美しさと、黒々とした幹とのコントラストが美しい。

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黒川にかかる大正橋から望むと、近くの山里の風景にもマッチして見応えもたっぷり。開花期には、竹を割ってつくった燭台に明かりを灯す。